1300年前の親心

みなさんこんにちは。

なかなかコロナ収まりませんね。

 

我々はワクチンや様々な薬を駆使して、このパンデミックの時代を戦っているわけですが、歴史上何度もパンデミックの時代はあったわけです。

昔の人はどうやって戦ったのかなと思いまして。

昔々の医学書を読みました。

 

「千金翼方」って650年頃の中国の医学書です。

日本に伝わったのは700年頃。奈良時代ですね。

710年:平城京 

なんと大きな平城京。の語呂は皆さん聞いたことがあるんじゃないかな。

 

当時、天平の疫病(737年~739年)って天然痘の大流行が起きました。

日本の総人口の25~35%が死亡する大惨事。

当時の首都、現在の奈良県では実に40%もの人が亡くなっています。

 

現在のコロナウイルス、オミクロン株の致死率は0.39%

重症化する!ヤバい!って言われたデルタ株で1.34%

1%前後の致死率でこの混乱ですよ。

 

40%の致死率。やばくないですか。

 

お父さん、お母さん、子供3人の5人家族なら、誰か2人が死ぬわけで…。

とんでもない悲劇です。

おそらく抵抗力の低い子供が犠牲になるパターンが多かったはず。

家族全員が無事なんて家は一つもなかったんじゃないかな。

 

1%の致死率で火葬場が追い付かない!なんて話もありましたけど、40%でしょ。

火葬場なんてない時代。

多分、見渡す限り死体の山ですよ。

 

 

庶民だけが犠牲になったわけではありません。

当時の政府で権力を欲しいままにしていた藤原四兄弟、全員が死亡しています。

我が子を失った権力者も多かったでしょう。

多くの貴族が病に倒れ、朝廷は政務を一時中断しました。

 

政府機関が閉鎖ですよ。

市役所も警察も水道も止まる感じでしょうか。

ちょっと想像を超えますが、とんでもない地獄。な気がします。

 

 

ちなみに奈良時代、お医者さんという職業はありません。

治療を行うのは、陰陽師とか僧侶。

彼らの地位は、現在で言うところの国家公務員総合職にあたります。

いわゆるエリート官僚ですね。

さすが1300年前。今の感覚とは全然違う。

 

 

そんな時代の医学書。

エビデンスに基づいた最先端医学!

基本的には漢方薬の使い方が書かれているわけですが、同様に重視されている治療法が

「人形を土に埋める」

 

うわぁ…そりゃ治らねぇわ…とは思いますが。

この人形が大量に発掘されたそうで。

 

当時、病気は疫病の神(唐鬼)が人にとりつく事で発症すると考えられていたようです。

木や土の人形を自分の代わりに鬼に連れ去ってもらうことで、人々は病から逃れようとしました。

 

 

漢方薬など超高価で庶民の手には届かない。 

バタバタと人が死んでいく地獄のなかで、親たちは「私の子供を連れていかないで」と願いを込めて人形を埋めたのでしょう。

原始的な医学はちょっと笑っちゃいますけど、この親心は笑えないなぁ。

必死だったんだろうなと思います。

 

 

もちろん、当時のお医者さんは庶民に呪術・祈祷の類だけを行っていたわけではありません。

発熱、湿疹、下痢が起きるが、下痢をしっかり治せ。

腹を冷やすな。

粥を与えて、生水や肉魚を与えるな。

といった治療方針も打ち出しています。

今でいう総理大臣にあたる太政官が発した、地方政府への命令書では「諸国の民も大変だろう。税を免除し、粥が手に入らない者には倉を開いて米を分け与えよ」と書かれています。

なんと優しい親心。

今の政府は増税するとか言うてますけど。

 

 

ちなみに、奈良、東大寺の大仏あるでしょ。

高さ15m。5階建てビルと同じくらいの大きさ。

1300年前に、そんな巨大な金属の塊を作り上げるのは、とんでもない情熱です。

天然痘パンデミック終息後に、こんな悲劇が繰り返されないようにと建てられたものだそうです。

ある意味、当時の医学的根拠を基に作られたわけです。

まぁ残念ながら予防効果はないわけで、その後も悲劇は繰り返されるわけですが、あのデカさは当時の人々の絶望と希望の大きさなんだろうなぁと思っちゃいます。